TOP > 自然災害(地震)に対する従業員のケガ補償
今年もまた3月11日には東日本大震災の報道を多く目にしました。
あの震災からもう14年が経ちました。
この震災は未曾有の大災害でしたが、その震災が起きた2011年以降も、
長野県神城断層地震(2014年)、熊本地震(2016年)、
鳥取県中部地震(2016年)、大阪府北部地震(2018年)、
能登半島地震(2024年)など、大きな地震が数年おきに発生しています。
東日本大震災発生後には企業相手にいくつもの訴訟がおきています。
これは「自然災害発生時にも企業には労働契約法第5条等において
明文化されている安全配慮義務があり、民事責任が生じる可能性がある」ことが
考え方のベースにあるわけですが、
この民事責任を考える上でのポイントの1つに「予見可能性」が挙げられます。
自然災害による事故においては、その時点の知見を基準として、
故意・過失(予見可能性、結果回避可能性)の有無が判断されることになります。
これは企業の話ではありませんが、例えば、宮城県の小学校で多数の児童が
東日本大震災の津波の犠牲になり、市と県が損害賠償を求められた訴訟では、
市と県に約14億3,600万円の支払いを命じた判決が確定しています。
この判決では、「校長らには児童の安全確保のため、地域住民よりも
はるかに高いレベルの防災知識や経験が求められる」と指摘したうえで、
市のハザードマップで同小学校が津波の浸水想定区域外だったにも関わらず、
「校長らは学校の立地などを詳細に検討すれば津波被害を予見できた」と
判断されています。その時点における予見可能性をもとに責任がある
との判断がなされたわけです。
これを一般企業に当てはめてみると「企業の責任は、様々な経験を踏まえた
現時点での知見によって判断される」となります。
例えば有名な七十七銀行女川支店の訴訟では、
東日本大震災の当時は知見が無く「予見可能性」「結果回避可能性」がないと
判断されたケースもあります。
しかしながら、現時点で同様の事故が起こった場合には企業に過失があると
判断されるかもしれません。
その意味から、自然災害の頻発する日本では、過去の知見・経験値が
積まれることで、企業が民事責任を負う可能性は年々高まっている、
といえます。